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高倉健と倉本聡がクロード・チアリでボンジュール

78年の降旗康男監督「冬の華」はじつによい。

なんしか39年前の映画だけに、主な出演者はほとんどこの世に居ない。

主演の高倉健が83歳で亡くなったのはつい最近やけど、チンピラ役の三浦洋一が46歳、小池朝雄は54歳、山本燐一も53歳で亡くなってるんやね。

65歳で亡くなった峰岸徹もバリバリで目に沁みる。

わんぱくでもいいたくましく育ってほしいの田中浩も93年に59歳で逝ってるから、このときはまだ44。

大滝秀治夏八木勲、藤田進、岡田真澄小沢昭一、池辺良、曽根晴美もいまはなく、田中邦衛は引退状態。

いまも現役で頑張ってる出演者といえば、小林稔持、池上季実子倍賞美津子北大路欣也小林亜星くらいのもの。

冒頭、人影のない冬の砂浜で語り合うふたりの男と、少し離れて見守る男と、無邪気に走り回る少女の姿。

と、大柄なほうの男がもうひとりの腹を刃物で刺す。

その場で斃れた男に無邪気に駆け寄る少女。

刺した男は高倉健で、刺されたのは兄貴分の池辺良。

組への裏切りを知った高倉が池辺を始末、見守り役を務めたのは兄弟分の田中邦衛で、少女は池辺の3歳になる一人娘だった。

自首して15年の刑期を終えた高倉が組に戻ると、そこにはすっかり様変わりした極道社会があった。

田中は外車屋のオーナーに納まり、幹部たちは毎夜のように高級クラブに繰り出し、組長に至っては血なまぐさい任侠の世界から身を退き、絵画収集と自らも絵筆を握ることに夢中になっていた。

高倉健の兄の役をやってるのが6歳上の大滝秀治

ふたりだけでしみじみ語り合うシーンは、12年の高倉の遺作「あなたへ」でやはりこれが遺作になった漁師役の大滝秀治とふたりで話すシーンを彷彿とさせてたまらない。

監督は同じ降旗康男やから、もしかすると、この作品のあのシーンをイメージして撮ったんかもね。

後半のストーリーは前半以上に高倉健をとにかく不器用に描いている。

もっとほかにやりようはあるやろに、どこまでも不器用な高倉健

でも、それこそが高倉健の真骨頂であり、器用な高倉健なんか、ガリガリに痩せた石ちゃん並みに価値がない。

とはいえ、彦麻呂は少し痩せんと見ていて辛い。

さすがに降旗監督はよくわかっている。

徹頭徹尾、不器用にふるまい、不器用に生きる主人公の姿は、誰もがそうあれと願う高倉健の姿なんやね。

そう考えると、この映画は高倉健のイメージビデオと言うてええのかも。

ところが、BGMはクロード・チアリの流麗なギターで、フランスのフィルムノワールみたいな雰囲気もあって、ほかにはない演出がおもしろい。

魔法のように器用な指の動きで奏でるギターの音色が、主人公の不器用さを際立たせていて。

脚本も倉本聡やからね。

いまは犬のおとうさんになってしまった北大路欣也も若々しくてかちっかちでたまらんよ。